アート Art

フランスに学ぶアートな暮らし-3〜杉浦岳史さん(パリ在住ライター)

芸術の都、フランスの人々はどんな風にアートを楽しんでいるのでしょうか?
今回は屋外彫刻についてです。

街角が美術館

フランスでも、日本と同じように屋外彫刻がさかんに作られています。しかしそこはフランスだけに、その担い手は世界に名の知れた芸術家がずらり。残念ながら忘れ去られたアートも多く、ガイドブックでの紹介もわずか。美術館やショップ、レストランを探して街を歩いていると、いつの間にか素通りしてしまいます。
たとえば、世界初の百貨店といわれるボン・マルシェからサンジェルマン界隈に向かう道にある騎馬像。彫刻家、セザール・バルダッチーニの作品です。彼は自動車を圧縮した作品で世間をあっと言わせた「ヌーヴォー・レアリスム」という潮流の一人で、フランスの映画賞のトロフィーをつくり「セザール賞」の名の由来にもなりました。
そのままサンジェルマン・デ・プレ教会前へ。ここではつい教会やフロールなどの有名カフェに目が行きますが、すぐ傍らにザッキン、そしてピカソの彫刻がひそやかにおかれています。また国立美術学校の近く、カフェ・パレットの彫刻は、まさに人々の暮らしに溶けこんだアートです。

教会のなかのアート

フランスには現代作家の手によってステンドグラスが作られたケースも多く見られます。私が好きなのはソルボンヌにほど近いサン・セヴラン教会、抽象絵画のジャン・バゼーヌによる作品。斬新な表現にどこか力強さがあって、聖書の絵解きのようなステンドグラスとはまた違う形で、心に迫ります。
先日行ったロレーヌ地方のメッスという街の大聖堂では、シャガールの美しいステンドグラスを見ました。世界大戦中フランス北部の各都市は、米英軍の爆撃などによって多くの教会が破壊され、その後再建に際して現代作家の建築、ステンドグラスも多く採用されました。古い建築ばかりでなく、こうした歴史に目を向けると、人々の文化への思いが感じられるものです。

グラフィティアートの楽しみ

もうひとつ街角アートといえば、忘れてならないのがグラフィティ(落書き)アートです。古くからアパルトマンの壁面などに描かれて、これも愛すべきパリの風景の一部。至るところで見られますが、モンマルトル地区や5区のムフタール通り界隈に多く出没しています。
デスマスクのように型をとったのか、本物かと思うほどリアルな顔が壁に浮き出ていたり、エスプリの効いた言葉が書いてあったり。ジェフ・アエロソルのように、グラフィティで世界に名の知られるアーティストの作品もまだ見られます。
パリに限らず、ご旅行で街を訪れたら、目的の場所へ一直線!ではなく何の変哲もない街角をゆっくり眺めながら歩いてください。きっと暮らしを豊かにしてくれる新しい発見や面白い風景に出会えます。

写真上から
サンジェルマン地区・セザールの騎馬像/メッスという街の聖堂にはシャガールのステンドグラスも/抽象画家バゼーヌによるサン・セヴラン教会のステンドグラス/モンマルトル地区で見つけたストリートアート

杉浦岳史さん
東京で広告ライター、ディレクターとして活動ののち2009年に渡仏。現在パリの高等学院IESAに在籍し、美術史、アートマネジメントやアートマーケットを学びつつ、執筆活動をつづける。
http://ameblo.jp/sucreweb/

パリのアート情報はこちらのサイトをご参考に。
アート情報誌<l’Officiel>のウェブサイト http://www.officiel-galeries-musees.com/

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