アート Art

フランスに学ぶアートな暮らし-4〜杉浦岳史さん(パリ在住ライター)

芸術の都、フランスの人々はどんな風にアートを楽しんでいるのでしょうか?
今回はパレ・ド・トーキョーについてです。

 

 

 

 

 

 

 

「トーキョー」の名がついた芸術拠点

今回は、パリのセーヌ川沿いにある芸術スポット「パレ・ド・トーキョー」の話題をお届けします。「トーキョー」というだけに、日本人ならちょっと気になるところ。その名は、この施設が1937年に万国博覧会場のひとつとして完成したときに、建物が面するセーヌ川沿いの道が「トーキョー通り」であったことに由来しますが、第二次大戦中に「東京」はどうか・・・と、その道が「ニューヨーク通り」にあっさり改名され、建物の通称だけが残りました。

 

コレクションがない!?

現代アートを中心に数々の展覧会がひらかれていますが、ここはいわゆるミュゼ(美術館)ではなくアートセンター。基本的には所蔵品を持っていません。ディレクターを中心に展示のコンセプトをつくり、作品を集め、あるいはアーティストに制作を依頼・共同企画して、展覧会を開催。人々に公開して、芸術の啓蒙を行っているのが特色です。
フランスではこうしたアートセンターの数が多く、とくに現代アーティストを育てたり、芸術活動を市民や子供たちにひろめることに大きな役割を果たしています。
館内は展示スペースのほか、レストラン「Tokyo Eat」、カフェテリア「Tokyo Self」が人気。そして屋上にはなんと「Nomiya」と呼ばれる眺望抜群のアーティスティックなスペース。「飲み屋」という名とは裏腹のモダンな空間では、「ART HOME」というテーマのもと、シェフを招いた料理アトリエなどを催して話題を集めています。ちなみに、それぞれ名前を見るとなんとも日本的ですが、「パレ・ド・トーキョー」の企画スタッフに日本人はいないそうです。

 

工事現場が展示会場!?

もうひとつの注目は、この施設のグランドフロア。これまで廃墟同然だったスペースを来年に向けて改装するのを前に、この廃墟感覚を活かした展示会が行われています。昨年終わりにはフランスの写真家ソフィ・カル、現在はアモス・ギタイというイスラエルの映像作家が作品を発表(4月10日まで)。工事現場さながらの場所でアートを見るという、それだけでも異空間体験を味わえるのですが、世界的に知られる作家だけあって、雰囲気を活かした作品の見せ方にはやはり驚きや面白さがあります。
新しい試みでアートの可能性や楽しさを感じさせてくれる「パレ・ド・トーキョー」。日本のアート界にも参考になることがありそうです。こういう施設なら、いままで「よく分からない」と思っていた現代アートの面白さに気づくかも知れません。

写真上から
パレ・ド・トーキョー内のカフェテリア/Nomiyaという名のスペースも/限定公開の廃墟スペースで学生たちがスケッチ/写真家ソフィ・カルの展示風景/映像作品を上映/なぜかここはスケートボードをする若者のメッカ

杉浦岳史さん
東京で広告ライター、ディレクターとして活動ののち2009年に渡仏。現在パリの高等学院IESAに在籍し、美術史、アートマネジメントやアートマーケットを学びつつ、執筆活動をつづける。
http://ameblo.jp/sucreweb/

パリのアート情報はこちらのサイトをご参考に。
アート情報誌<l’Officiel>のウェブサイト http://www.officiel-galeries-musees.com/

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